「私の」かかりつけの医院を創る。

設計の眼002

中野坂上「堤耳鼻咽喉科医院」の場合

 「街」のクリニックは、そこに通う人にとっては、かかりつけの医院として「心地よい」ものであって欲しいものです。

 東京中野区の中野坂上近くにある「堤耳鼻咽喉科医院」は、2017年に、先代の院長先生から引き継ぐことを契機に息子さんによって、集合住宅と併設の薬局を合わせた鉄筋コンクリート造の複合ビルとして増改築された、街の医院(耳鼻咽喉科)です。施主から地元の人々の間に強く根づく、行きつけのクリニックにしたいとの要望があり、それを建築設計の立場から、「患者さんが我が家のような居心地の良い空間、人に自慢したくなるクリニック」と昇華し、大きなテーマとして設計上さまざまな工夫を凝らしました。

 建物の外観や看板は、思い切って近くの代々木公園の「森」のイメージにつながるものという構想で創り出しました。

 看板は、「葉」をイメージしたものでしたが、竣工後、来客の子供の患者さんから「お耳の看板」と表現されたということを、医院の方から聞きました。子供の感受性はすごいものです。

 外観も、「森」に繋がるイメージです。

 待合室には、ここでも居心地の良さの実現と表現のために、音響対策を含めた仕上にしたのですが、ここでも、竣工後間もなく子供の患者さんから、「先生、やっとおうちになったね。」と言われたそうです。設計者としては大変嬉しい反応でした。